生成AIを使えば業務改善ができそうだ。そう感じている経営者は増えています。

一方で、実際に始めようとすると「ChatGPTを入れればよいのか」「社員に研修を受けてもらえばよいのか」「どの業務から試すべきなのか」が曖昧になり、最初の一歩で止まりがちです。

結論から言うと、中小企業のAI活用はツール選びから始めない方がうまくいきます。先に整理すべきなのは、自社の業務、困っていること、優先順位です。

AI活用の相談先や支援範囲を先に知りたい場合は、AI顧問とは?中小企業が相談できる内容・料金・進め方も参考になります。

なぜツール選びから始めると失敗しやすいのか

AIツールは毎月のように新しいものが出てきます。文章作成、議事録、画像生成、資料作成、検索、社内ナレッジ管理など、できることも幅広くなっています。

ただし、ツールから入ると「何に使うか」が後回しになります。その結果、最初は触ってみたものの、現場の業務には定着しないことがあります。

よくある失敗は次のような形です。

  • 話題のツールを導入したが、誰が何に使うか決まっていない
  • 社員に使ってよいと言ったが、具体的な業務に落ちていない
  • 便利そうな使い方はあるが、成果につながっているかわからない
  • 情報漏えいや著作権の不安があり、結局使われない

AI活用で大事なのは、ツールを増やすことではありません。自社の業務の中で、どこに使えば時間・コスト・売上に効くのかを見つけることです。

具体的にどの業務から試せるかを知りたい場合は、AIでできることを仕事別に解説で業務別に整理しています。

最初に整理すべき3つのこと

1. 時間がかかっている業務

まずは、日々の業務で時間がかかっているものを書き出します。

たとえば、議事録作成、メール返信、提案書作成、見積書作成、問い合わせ対応、資料の要約、社内マニュアル作成などです。

AIは、ゼロから何かを考える業務だけでなく、文章化、要約、分類、たたき台作成に向いています。人が毎回似たような作業をしている業務は、最初の候補になります。

2. 判断に迷っている業務

次に、毎回判断に迷っている業務を整理します。

AIは最終判断を任せるものではありませんが、判断材料を整理する用途には使えます。たとえば、営業施策の選択肢を出す、顧客の声を分類する、改善案を比較する、といった使い方です。

経営者や部門長が頭の中で考えていることをAIに投げると、論点が見えるようになります。これだけでも、会議や意思決定の質が上がることがあります。

3. 成果につながりやすい業務

最後に、成果につながりやすい業務を選びます。

AI活用は、最初から全社展開しなくて構いません。むしろ、ひとつの業務で小さく試し、効果が見えたら広げる方が進めやすいです。

たとえばBtoB企業であれば、営業資料、ホワイトペーパー、記事制作、問い合わせ対応、商談準備などは成果との距離が近い領域です。

BtoBマーケティングやAI検索時代の情報設計まで考える場合は、LLMO対策とは?中小企業が今からできるAI検索時代の情報設計も合わせて読むと整理しやすくなります。

まずは小さく試す

AI活用は、大きな導入計画を作る前に、小さく試すことが重要です。

おすすめは、1つの業務を選び、2週間から1か月ほど試すことです。その期間で、次の点を確認します。

  • 作業時間は減ったか
  • 成果物の質は上がったか
  • 担当者が使い続けられそうか
  • 社内ルール上の不安はないか
  • 他の業務にも展開できそうか

このように小さく試すと、AIが自社に合うかどうかを現実的に判断できます。

現役エンジニアに相談する価値

生成AIは誰でも使えるようになりました。ただ、ITの専門家・現役エンジニアと、一般の方の間には経験の差があります。

エンジニアにとっては当たり前のことでも、業務改善の現場では大きなヒントになることがあります。たとえば、情報の整理方法、プロンプトの考え方、データの扱い方、業務フローの分解方法などです。

AI活用は、単にプロンプトを覚えるだけではありません。業務を分解し、どこを人が判断し、どこをAIに任せるかを設計することが大切です。

AI顧問ハカドルくんのサービス内容では、壁打ち、業務整理、AI活用方針の相談として何を支援するかをまとめています。

AI活用を始める前の業務棚卸し

中小企業がAI活用を始めるときは、まず業務を棚卸しします。

棚卸しといっても、全業務を細かく図にする必要はありません。最初は、日常的に発生している作業を大きく書き出すだけで十分です。

たとえば、次のような観点で整理します。

観点確認すること
発生頻度毎日、毎週、毎月発生しているか
作業時間担当者がどれくらい時間を使っているか
属人性特定の人しかできない作業になっていないか
手戻り修正や確認が何度も発生していないか
情報リスク顧客情報や機密情報を含むか

この整理をすると、AIで試しやすい業務と、まだ手をつけない方がよい業務が見えてきます。

AI活用の最初の目的は、すべての業務を自動化することではありません。まずは、負担が大きく、リスクを抑えて試せる業務を見つけることです。

部門別に見る最初の候補

AI活用の候補は、部門ごとに見ると整理しやすくなります。

営業

営業では、商談準備、提案書の構成、フォローメール、顧客課題の整理にAIを使えます。

たとえば、商談前に「顧客の業種」「想定課題」「提案したいサービス」を入力し、ヒアリング項目や提案の切り口を出す使い方です。

営業資料を毎回ゼロから作っている会社では、構成案や見出し案だけでも作業時間を減らせます。

事務・管理部門

事務や管理部門では、社内案内、マニュアル、FAQ、議事録整理にAIを使いやすいです。

社員から同じ質問が繰り返し来ている場合、その質問を整理してFAQ化するだけでも効果があります。

ただし、労務、契約、個人情報に関わる内容は、AIの出力を必ず人が確認する必要があります。

マーケティング

マーケティングでは、記事構成、SNS投稿案、メールマガジン、ホワイトペーパーのたたき台にAIを使えます。

AIは複数の案を出すのが得意です。企画の初期段階で選択肢を広げ、そこに自社の実績や顧客理解を加えると、効率よくコンテンツを作れます。

AI活用で失敗しやすい進め方

AI活用が進まない会社には、いくつか共通点があります。

使う業務が決まっていない

「AIを使ってください」と社員に伝えるだけでは、現場は動きにくいです。

社員からすると、どの業務に使ってよいのか、どの情報を入力してよいのか、出力をどこまで信じてよいのかがわかりません。

最初は「会議メモの要約」「営業メールの下書き」「社内案内文の作成」など、具体的な業務を指定する方が定着しやすくなります。

最初から大きな成果を求める

AI活用は、最初から売上を大きく伸ばす施策として考えると難しくなります。

まずは、作業時間を減らす、文章作成の負担を下げる、確認漏れを減らすといった小さな改善から始めます。小さな成果が見えると、次の業務にも広げやすくなります。

ルールを決めずに始める

AI活用では、入力してはいけない情報を決めておく必要があります。

顧客名、個人情報、契約内容、未公開の事業計画などをそのまま入力してしまうと、会社としてのリスクになります。

最初に社内ルールを作り、使ってよい範囲を明確にすることが重要です。

最初の1か月の進め方

AI活用は、1か月単位で小さく検証すると進めやすいです。

1週目:業務を洗い出す

まず、時間がかかっている業務を洗い出します。

このとき「AIで何ができるか」ではなく、「どの作業に困っているか」を聞くのがポイントです。

2週目:試す業務を1つ選ぶ

洗い出した業務の中から、最初に試すテーマを1つ選びます。

おすすめは、文章作成、要約、情報整理など、AIと相性がよく、リスクが低い業務です。

3週目:使い方の型を作る

AIに何を入力し、何を出力させ、誰が確認するかを決めます。

プロンプトのテンプレートを作っておくと、社員ごとの使い方のばらつきを減らせます。

4週目:効果を振り返る

最後に、作業時間、使いやすさ、品質、リスク面を振り返ります。

うまくいった場合は、テンプレートを整えて他の社員にも共有します。うまくいかなかった場合は、対象業務や指示文を見直します。

AI活用の効果を確認する指標

AI活用の効果は、難しい指標で測る必要はありません。

最初は、次のような項目を見るだけでも十分です。

  • 作業時間が減ったか
  • 担当者の負担感が下がったか
  • 成果物の品質が安定したか
  • 手戻りが減ったか
  • 他の業務にも広げられそうか

たとえば、議事録なら「会議終了から共有までの時間」、営業資料なら「構成案作成にかかった時間」、問い合わせ対応なら「回答文作成までの時間」を見ます。

大切なのは、AIを使ったことではなく、業務が改善したかどうかです。

よくある質問

AI活用は何から始めるのが一番よいですか?

多くの中小企業では、メール、議事録、社内文書、営業資料のたたき台から始めるのがおすすめです。

これらは日常的に発生し、効果を確認しやすく、リスクも比較的抑えやすい業務です。

AIツールを先に選んではいけませんか?

ツール選びが悪いわけではありません。ただし、先に業務と目的を決めないと、ツールを入れても使われにくくなります。

「どの業務を改善するために使うのか」を決めてからツールを選ぶ方が、導入後の失敗を減らせます。

社員がAIを使ってくれない場合はどうすればよいですか?

使う業務を具体化し、テンプレートを用意します。

自由に使ってくださいではなく、「この業務では、この指示文を使う」と決めると、AIに慣れていない社員でも使いやすくなります。

AI活用を社内で広げるタイミング

最初の業務で効果が見えたら、次に社内展開を考えます。

ただし、すぐに全社展開する必要はありません。まずは、似た業務を持つ部署に広げるのがおすすめです。

たとえば、営業メールで効果が出た場合は、採用メールや問い合わせ返信にも応用できます。議事録整理で効果が出た場合は、定例会議やプロジェクト会議にも広げられます。

広げるときは、次の点を確認します。

  • 同じような作業が他部署にもあるか
  • 入力情報のリスクは高くないか
  • テンプレートを流用できるか
  • 確認担当者を決められるか
  • 効果を測る方法があるか

社内展開では、成功例をそのまま押し付けるのではなく、部署ごとの業務に合わせて調整することが大切です。

ツール選定は最後でよい

AI活用というと、ChatGPT、議事録ツール、資料作成ツール、画像生成ツールなど、ツール名に目が向きがちです。

しかし、最初の段階ではツール選定を急ぐ必要はありません。

先に決めるべきなのは、改善したい業務、使う人、入力情報、確認フローです。これらが決まると、必要なツールの条件も見えてきます。

たとえば、議事録を効率化したいなら音声文字起こしとの連携が重要になります。社内文書を整理したいなら、共有フォルダやナレッジ管理との相性が重要になります。

ツールは目的に合わせて選ぶものです。目的が曖昧なまま選ぶと、導入後に使われなくなる可能性があります。

経営者が持つべき視点

中小企業のAI活用では、経営者や管理職の関与が重要です。

現場任せにすると、詳しい社員だけが個人的に使い、会社全体の業務改善にはつながりにくくなります。

経営者が見るべきポイントは、次の3つです。

  1. どの業務の負担を減らすのか
  2. どのリスクを避ける必要があるのか
  3. 効果が出たらどこへ広げるのか

細かいプロンプトをすべて覚える必要はありません。AI活用を業務改善として捉え、優先順位を決めることが経営者の役割です。

AI活用の社内ルールを簡単に作る

AI活用を始めるときは、簡単な社内ルールを作っておきます。

最初から細かい規程を作る必要はありません。まずは、社員が迷いやすい点を明確にします。

決めるべきことは次の通りです。

  • どの業務で使ってよいか
  • 入力してはいけない情報は何か
  • AIの出力を誰が確認するか
  • 外部公開前に誰が確認するか
  • うまく使えた例をどこに共有するか

たとえば、顧客情報、個人情報、契約内容、未公開の資料は入力しない。メールや資料に使う場合は担当者が確認する。外部に出す文章は責任者が確認する。この程度のルールでも、何も決めないより安全です。

ルールがあると、社員は「どこまで使ってよいか」を判断しやすくなります。AI活用は自由に任せるより、使ってよい範囲を決める方が社内に広がりやすくなります。

相談するタイミング

AI活用は自社だけでも始められますが、迷ったら早めに相談する方がよい場面もあります。

たとえば、どの業務から始めるべきかわからない、社内ルールの作り方が不安、社員にどう使ってもらうか決められない、ツール選定で迷っている、といった場合です。

この段階で相談すると、高額なシステム開発に進む前に、まず整理すべきことが見えます。

AI活用は、ツールの知識だけでなく、業務の分解、リスク管理、社内展開の設計が必要です。外部の視点を入れることで、自社に合う進め方を選びやすくなります。

まず決めるべきゴール

AI活用を始める前に、最初のゴールを小さく決めます。

たとえば「議事録作成を月10時間減らす」「営業メールの下書きを半分の時間で作る」「社内FAQを30件整理する」といった具体的なゴールです。

ゴールがあると、AIを使う目的が明確になります。逆に、目的が曖昧なままだと、便利そうな使い方を試すだけで終わりやすくなります。

最初のゴールは大きくなくて構いません。小さな成果を出し、社内で共有し、次の業務へ広げる流れを作ることが重要です。

このゴールを決めておくと、ツール選定や社内説明もぶれにくくなります。

また、効果が見えなかった場合にも、業務選定が悪かったのか、使い方が悪かったのか、ツールが合わなかったのかを振り返りやすくなります。

振り返りまで含めて設計すると、AI活用は一時的な試用で終わりにくくなります。

まとめ

中小企業のAI活用は、ツール選びから始める必要はありません。

まずは、時間がかかっている業務、判断に迷っている業務、成果につながりやすい業務を整理することから始めます。

そのうえで、小さく試し、うまくいったものを広げていく。この進め方であれば、AIに詳しい人材が社内にいなくても、実務に近い形で活用を始められます。

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